昨日の18日はTWSCのオンラインテイスティングで、ジャパニーズクラフトジン7種をテイスティング。プラスして受講者に送られた5本もテイスティングしたので、計12アイテムをやったことになる。その前にウイ文研のトライアルパック、「サントリー基本のき」で、5本のテイスティングと、ミニ解説をやっていたので、1日で17本。合計3時間近く話したことになる。ほとんど体力勝負、デスマッチであるが、とりあえずTWSC、そしてトライアルパック第3弾、15アイテムを終了したことになる。
山形から帰って、そんなことに忙殺されていたが今日19日はWBBCの2時間の収録・ライブ放送があるので、その準備にも時間を取られていた。バーチャル蒸留所ツアーは、いよいよスぺイサイドで、今回はリベットにマッカラン、フィディックなど、有名どころを中心に回る予定だ。なかでもダフタウンのフィディック、バルヴェニー、モートラックは必見だ。特にモートラックは一切公開していないので、内部の様子を知ることは不可能。そういう意味では貴重な映像だ。
10大ニュースは2週間くらい前から、あれこれ考え、ほぼ今週月曜には決めていたが、そこへ突如飛び込んできたのが、ペルノリカールの中国の蒸留所のニュースだった。ディアジオが雲南省の大理ペー族自治区に蒸留所を建設するとアナウンスしたばかりで、その時にペルノはどうしたのだろうかと、このブログにも書いたが、それを受けてというわけではないのだろうが、一昨日、突如ペルノか四川省の蒸留所が竣工し、すでに蒸留を初めているとアナウンスした。
これは2年半前に報じられていたニュースで、場所は四川省の峨眉山(がびさん)。蒸留所名は今回公表されたが、チュワン蒸留所。つまり〝川蒸留所″、リバーディスティラリーである。もちろん四川省から取られている。ディアジオの雲南蒸留所が85億円のプロジェクトであるのに対し、ペルノのこのリバー蒸留所はその倍の170億円の巨大プロジェクトだ。造るのは中国初となる本格モルトウイスキー。まだ生産の細かいスペックは発表になっていないが、観光とも合体した一大プロジェクトであることは間違いない。
峨眉山は世界遺産にも登録されている中国三大霊山の1つで、さらに四大仏教名山の1つでもある。標高は約3,100メートルで、連なる峰々が女性の優美な眉のように見えることから、この名が付いたという。かつての蜀の国で三国志ファンにはお馴染みの場所。大学の時に中国語と漢詩をとっていた私にとって、懐かしい場所でもある。行ったことはないが、峨眉山は詩聖・酒仙ともいわれる李白の生地でもある。その李白が25歳の時に詠んだ句が、有名な『峨眉山月の詩』で、50年近く前の大学の授業でも習っていた。李白が得意とする絶句で、これは七言絶句。船に乗って故郷をあとにした李白が、峨眉山に昇る月と、山峡の風景、そして河を詠ったもので、三峡に向かうと自ら詠んでいる。三峡は有名な揚子江(長江)の要衝で、ここを下れば、やがて重慶、そして中原に至る。
李白はのちに長安の都で玄宗皇帝にも仕えたが、この時に杜甫や、そして日本の阿部仲麻呂とも交友を持っている。酒仙といわれるのは、無類の酒好きで、「酒一斗、詩百篇」といわれたからでもある。故郷の四川省を遠く離れて、生涯を漂白した李白には古里を詠った詩も多いが、私の好きな一句が「静夜思」である。「床前 月光を看る 疑うらくは是 地上の霜かと…」。これは五言絶句で、その後に「頭を挙げて山月を望み 頭を低れて故郷を思う」と続く。これほど見事な望郷の詩もないだろう。
さて、ペルノの峨眉山の蒸留所、そしてディアジオの雲南の蒸留所。非常に楽しみな蒸留所が中国に誕生した(する)ことになる。ウイスキーをやり始めて今年で33年。まさか、こんな時代がくるとは…。
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